月に読む手紙絡め合う指がしばらく会えなかった時間を埋めるように強く求め、これから、というところに似つかわしくない耳障りな音が響く。
騎士団長召集用のコール音。
瞬間、フエゴレオンはノゼルを手放し、ノゼル自身も素早く跳ね上がり連絡を受ける。
「わかった、直ぐに向かう」
先程まで掴んでいた厚く大きな手を求めるように爪がテーブルを掻いた。
こんな時間に団長が招集されるなど余程の事だとお互いに理解しているので、余韻に浸る間もなく脱いだばかりの服を集める。
ノゼルが例のややこしい構造の服を着ている最中、解けていた前髪をフエゴレオンが編み始めた。
太い指先ながら、幼い頃の弟の髪を結っていた事もあり手際がいい。
「また、だな」
視界の端で月明かりに照らされた彫りの深い顔が微かに笑った。
1915