酒気に惑う恋心アジトの一角、バーカウンター。珍しく暇を持て余し、常連の酒飲み連中に混ざって雰囲気を楽しんでいたアンドラスはグラスの中身を一口飲むや否や、「おや」と呑気な声を出した。カウンターの内側にいるパイモンを呼び止める。
「ねえ、これ間違ってない? エンゼルジュースじゃなくて酒だと思うんだけど」
「マジか。あ〜…悪い、カスピエル達に飲ませようとしたのと取り違えたみたいだ。…にしてもオマエ酒強いんだなあ。それ結構度数高いヤツなのに全然顔色変わってないじゃないか。——そっちの彼女と違って」
「うん…俺もまさかこんなにデカラビアが酒に弱いとは思わなかったよ」
アンドラスの隣に目をやれば、そこにはカウンターに丸い頭を突っ伏しているデカラビアがいた。部屋に籠りきりというのは肉体的にも精神的にも健康によろしくないとアンドラスが少しばかり強引に連れ出してきたのだが、同じように間違えて出されたアルコール度数の高い酒を飲んでしまったようだ。
1645