「おかあさん、いいにおい」
ほにゃんとした声で呟いたのは孫家の次男である悟天だ。
夜、今日は眠気がいつもより早くきたのか、晩御飯もお風呂も終わった悟天がソファで転寝をしていたのをチチが抱き上げたのだ。
チチの首元に顔を埋めるような形の悟天の背中をチチが撫でる。
「そうけ? おっかあもお風呂出たばっかだから、石鹸の匂いがしてるのかもだべな」
「いいにおい~」
「ふふ、悟天ちゃんくすぐったいだべよ」
眠い悟天はいつもよりチチに甘える。すっかり乾いている我が子の髪が首筋をくすぐりチチが笑っていると、彼女の腕から我が子の重みが消えた。
「よし、悟天、ちゃんと部屋で寝ようなー」
「おとうさん」
「寝てていいぞ、運んでやっから」
父親の言葉に悟天は素直に頷き眼を閉じる。そのまますぐに寝入っていく悟天を抱いた悟空がチチににかっと笑い先ほど息子がしていたように彼女の首筋に顔を埋めた。
「ホントだ、いい匂いすんな」
「どさくさに舐めるでねぇ。ほら、悟天ちゃん連れてってあげてけれ。そのあと悟空さもお風呂だべよ、悟天ちゃんと一緒に寝ちまうとかナシだべよ」
「チチが風呂上りの髪拭いてくれるって約束してくれんならすぐ入っぞ」
「いいけんど、ほんとに髪を拭くだけだからんな」
「いいよ、それ以上はオラからすっから」
笑顔で言いたいことを言って次男を連れていく夫の姿を見送りながら、チチは下手すればもう一度風呂に入ることになるかもしれないと小さくため息をついた。