六年で半分くらいになってた 魔界における青リンゴは正真正銘真っ青である。伊吹は段ボールに整然と並ぶそれの中からずっしりとして瑞々しいのを吟味していた。
ルークから貰った青リンゴのコンポートのレシピを見ながらテキトーに選んだのを籠に入れていく。結局彼女に美味しいリンゴの見分けは正確にはつかなかったので、常人より遥かに優れた勘に頼ることにした。籠は大量のリンゴに耐えるようにギシ、と軋んだ。
伊吹にとってのコンポートとは、学校給食における花形であった。メインを一通り食べ終えてあり着く時には程よく柔らかくなっていて、甘さと内側の解凍しきっていない固さが絶品。だのに物価の高騰故か、年々小さくなっていくあの切なさを胸に抱えながら彼女は大人になっていった。
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