本日お休みの春居は、久しぶりに仕立て屋を訪れていた。それは着物をお直ししてもらうためなく、元同僚とだべるためである。
「なーぎちゃん、きーたよー!」
しかし呼び出しても店先に出てこない店主、凪を不審に思い、奥を少し覗けば合点がいった。
「琴男いるじゃん……」
げなーんとして見せたところで、二人は気づきもしないのだからやるせない。聞こえてくる会話は甘いったらないし、やれやれである。
「ルシファーさん!どうしてこんな時間に?」
「なに、少し時間が取れたから、その」
「?」
「……家に、」
「??」
「君がいる家に、帰りたかったよ」
ギュッと凪を抱きしめて首筋に顔を埋めるルシファーはただの甘えん坊であった。春居にはわからない、この男の何がどう良く思えたのか。それでも、凪はとても幸せそうな顔をしてルシファーを優しい手つきでよしよししているものだから、今日はそっとしておこうと春居はそっと店を抜け出した。
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