猫を追いかけて1「にゃあ」
微かに聞こえた声にスレッタは顔を上げた。
耳を澄ませて、その鳴き声の糸を手繰り寄せるように進んで行く。途中、飛び出た木の枝がおでこに当たった。それも気にせずに、ゆっくりと、でも確実に、音の鳴る方へ近付いていった。
目の前の茂みをかき分け進むと、その先でチラチラとした揺れる明かりが見えた。誰かいるのかとハッとし、太い木の幹を背にして、気付かれないように両手を口元に当てて耳を澄ませた。
「にゃーん、にゃ、にゃ」
「そうだな、にゃーだな」
猫の鳴き声に混ざって聞こえたその聞き覚えのある声に、スレッタは「ん?」と頭の中にハテナを浮かべた。まさか、と思いながら、恐る恐る頭を覗かせる。
「お前、どこから来たんだ? 飼い主はどうしたんだ?」
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