たぬきとバミと主「たぬき、匿ってくれ」
「またあいつか。」
音もなく空いた襖から顔を覗かせたのは骨喰藤四郎。心做しか疲れた顔をしている。こいつは表情に余りでないのであくまでなんとなくだが。
俺が傍においてあった座布団を視線で示すと、するりと骨喰が部屋に入り込んでくる。
「そうだ。さすがに耳にタコができる。……こっちは主か。」
「今日も長かったぜ。筋トレのメニューが一通り終わったとこだ。」
「それは…お疲れ様、というやつだな。」
勝手知ったる様子で、先程まで居た客が出しっぱなしにして行った麦茶をグラスに注ぐ骨喰。
片方のグラスを受け取り飲み干した。
「相変わらずだよなぁ、どっちかと言えば奴の方が不憫ではあるが。」
「毎度毎度惚気話を聞かされる俺たちの方が不憫だと思う。」
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