くるくる「……俺の?」
ドライヤーの電源を切り、スタンドに戻す。聞き間違いか、もしくはドライヤーからの熱風でうまく聞き取れなかったのだろうと思ったのだ。
「ああ、オレがやりたい」
鏡越しにシノを見る。やる気満々といった表情で彼は大きく頷いた。
「つまり、ドライヤーを? いいよ、自分で出来る」
「そんなことはわかってる。オレがヒースにやってやりたいんだ。ほら身を任せろよ、ヒースを最高に格好良くしてやる」
「……」
二人のユニットであるレモンパイ・ラバーズ。そのライブが近付き、練習も佳境に差し掛かっているとなれば、シャワーを浴びて汗を流したあとであっても妙な熱が残るものだ。そんな衝動はヒースクリフにも覚えがある。
だが、その方向性が特にライブと関係が無さそうとなれば釈然としない。
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