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    なつのおれんじ

    @orangesummer723

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    なつのおれんじ

    DONEオル光♀ / 似たもの同士
    自機ヒカセン出てきます
    不意に額に冷たい何かを感じ、驚いた冒険者は目を覚ました。荒く削られた石作りの天井が冒険者を見下ろしている。状況を飲み込めず、勢いよく起き上がった冒険者の背中を、何者かの大きな手が支えた。
    「む、起こしてしまったか。まだ横になっていたほうがイイ、熱が下がり切っていないからな」
     その声のおかげで、冒険者は自身の額に触れたものが、濡れたタオルだと把握することができた。
    「オルシュファン……」
     空色の瞳を曇らせたオルシュファンが、心配そうに冒険者の顔を見つめている。
    「患者さんたちは……?」
    「お前の最高にイイ働きによって、砦の者たちは全員無事に回復した。此度の助力、心より感謝するぞ、我が友よ」
     その言葉を聞いた冒険者は緊張の糸が切れたのか、へなへなとベットに倒れ込んだ。
    「良かったぁ……」
     キャンプ・ドラゴンヘッドにて突如謎の病が大流行したのは、つい数日前のことである。民間人、砦を守る兵士、さらには治療師までもが倒れ、砦は未曾有の危機に瀕していた。癒しと浄化の専門家──白魔道士である冒険者が、偶然この砦に立ち寄らなければ、最悪の事態も起こり得ぬ状況だった。
     "自分に出来ることならば 2298

    なつのおれんじ

    DONE雨の晴れ間に / マレ監
    2020-08-15
    監督生の一人称 ぼく / 性別特に決めてません / まだマレウスバレしてない頃の話
    夕方頃から降り出した雨は、闇が深まるにつれてその激しさを増し、叩きつけるような勢いでオンボロ寮の窓を濡らしている。時計の針はつい先ほど、真夜中の0時を回ったばかりであった。本来ならばこの寮の住人たちは寝静まっているはずの時間だが、監督生の部屋の窓からはうっすらと灯りが漏れている。
    「んっ……つの、たろっ……」
     雨音とは別に、監督生の部屋の中ではぴちゃぴちゃと小さな水音が響いている。2人で寝るのがやっとの大きさのベッドの上で、上半身の衣服を脱ぎ去ったマレウス・ドラゴニアが監督生をベットに押し倒し、口付けの雨を降らせていた。
    「お前はどこも柔らかいと思っていたが……ここも例外では無かったな」
     薄紅色に染まった小さな唇に、竜の君は何度も喰らい付く。その長い舌を口内に押し込めば、監督生は苦しそうにくぐもった声を出しながら、必死でそれを受け入れた。しかしその表情は次第に苦しげに変わっていき、ついに監督生はマレウスの口付けを拒んだ。
    「っ待って、くるしいっ」
    「ああ、すまない。つい夢中になってしまった」
     光を失い、濁った翡翠色の瞳が監督生をじっと見つめている。自らの口付けで乱れる様を見逃さな 4960

    なつのおれんじ

    DONEそねさに
    2020-05-17

    #リプもらった番号のワードを使って文を書く
    16.約束のティータイム 
    そよ風 / 安らかな寝顔 / 甘い
    穏やかな午後の昼下がり──食堂の隣にある談話室からは、焼きたてのパウンドケーキの甘い香りが漂っている。
    「主、遅いね。何かあったのかな?」
     割烹着姿の燭台切光忠がドアを開けて、心配そうに廊下を見渡した。
    「普段ならいの一番にやって来るはずなんだがなぁ」
    「お菓子好きなあの子が遅刻なんて珍しいね。いつも楽しみにしているのに」
     三日月宗近と歌仙兼定が目を合わせて、不思議そうな表情を浮かべている。
    「仕事に集中でもしてんじゃねーの?」
    「ご主人様に限ってそれはないと思うよ、豊前くん」
     亀甲貞宗の言葉に、一期一振が小さく笑い声を上げた。
    「主殿は休むときにはとことん休みますからな。一体何をしておられるのやら……今日は"刀派長の会"、山鳥毛殿初参加の日だと言うのに」

     今日は月に一度の本丸全体の休日である。馬当番と畑当番の刀剣男士を除いたほぼ全員が非番になるため、暇を持て余した刀派の長たちがこうして談話室を訪れるようになったのが、"刀派長の会"の始まりだ。いつ頃からか審神者も参加し、仰々しい名前で呼ばれ始めたお茶会は、今ではこの本丸の恒例行事となっている。
     そんな名だたる名刀の長が集ま 3346

    なつのおれんじ

    DONE泡沫の日常 / そねさに
    2018-11-25
    マグカップに珈琲を注ぐと、湯気と共に豊かな香りが立ちのぼった。
    戸棚から白い陶器の瓶を取り出し、蓋を開けると、中に入っているはずの角砂糖が無いことに気づく。先日同じように珈琲を淹れた時に切らしてしまったのを思い出し、おれは溜息をついた。
     ここのところ出陣も無かったせいか、どうも気が抜けている。普段なら切れた時点で補充しているのだが、すっかり忘れていた。
    ……しっかりしなければ。そう自分を叱咤しながら、戸棚に角砂糖の予備がないか探し始める。しかし、戸棚をガサゴソと漁ってみても、予備はどこにも見当たらなかった。
    (参ったな……)
     自分が飲む分には必要ないのだが、これは彼女のために淹れたもの。
    彼女は甘い珈琲を好むので、できれば砂糖たっぷりのものを用意してやりたかったが、無いものは仕方ない。マグカップを盆に乗せて立ち上がると、おれは再び溜息をついた。

     長い廊下を、珈琲をこぼさないようゆっくりと進んで行く。執務室に到着し、仕切り戸を指で軽く叩くと、はぁい、と軽やかな声が返ってきた。静かに戸を開けると、机に向かっていた彼女が振り返った。
     この本丸を取り仕切る審神者、つまりおれたちの主。 1495