幸福はそばに 清潔で真新しいシーツに変えられたベッド、衣類を取り払われ何も無くなったクローゼット。そして必要最低限にまとめられた荷物。
初めて部屋を与えられた状態に戻ったそこに、騎士の鎧を脱いだフレンは一礼をする。
フレンは今日、騎士団を退団した。
藍色を基調にした旅装束に身を包んだフレンは城門前でフレンは城を振り返る。ユーリと共に騎士団の門を叩いたのはもう十年以上も前だが、昨日のように覚えている。ユーリが夢半ばに去ったあともフレンは堅実に職務をこなし、様々な要因があったにせよ史上最年少で騎士団長の地位へと昇り詰めた。ユーリたちのおかげで救われたあとの世界を、国を良くして行こうと奔走する内に、あの旅はずいぶん遠い過去の物語になっていた。
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