誕生日の話 神田が時計を見たとき、大体予想どおりの時刻を指していた。ランク戦に出るか、防衛任務に就くか、訓練をするかというパターン化した生活をしていると自然と身体が時間を覚えるのだ。今ボーダーを出ると、家に着く頃には母親が夕食を作り終えていることが多いのでちょうどいい。
机の上に広げていた端末や筆記具を片づけていると、向かいの席の外岡が顔を上げた。
「そういや神田さん、なんか欲しいもんあるっスか?」
あまりに突拍子もない話題だったので、神田は返事をするタイミングを逃してしまった。というより外岡の意図を汲み取ることができず言葉が出なかったと表現するほうが正しい。
「ええと、誕生日プレゼントです。あんま高いものはダメ」
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