桃色の心音高鳴る鼓動を抑えられない。
新たな病にでも罹ってしまったのだろうか、と己が身を抱き締めた。
空腹で身体を起こせなくなったあの時とはまた違う、内側から溢れそうなこの苦しみは。否、喜びに近いこの感情は。どこから生まれたのだろう。
「……ねえさま」
一人ではとても耐えられない。誰か、この症状を緩和するまではいかなくとも……原因を、教えてくれそうな人は。
……少女にとって、縋ることができる相手は。
ただ一人だった。
「わたし、びょうきかもしれないの」
幼き淫魔は、瞳を潤ませて姉を頼り。
姉は、顔色を変えることなく少女を見つめていた。
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