バイバイ、お子ちゃまいつからサトシのことを「お子ちゃま」って呼べなくなっただろう。
震える声で好きだと想いを告げられた時か。
顔を真っ赤にしながら唇を重ねれきた時か。
ぎこちない手つきで素肌に触れてきた時か。
それとも、瞳の奥に燃え滾る炎を見た時か。
「カスミ」
耳元で吐息と共に吹き込まれた掠れた声に、びくりと体が強張る。お願いだから、そんな甘い声出さないでよ。
ぎゅっと目を瞑れば、乞う様に「こっち見て」と言われたけど、絶対に無理。今、あの目をーー私を求める愛欲に染まった黒茶色をーー見つめてしまったら、己のなけなしの理性はいとも容易く瓦解してしまうのだから。
「ねえ、カスミ」
「〜〜っやだ!」
とにかく距離を取ろうと胸板を押してもびくともしないのが腹立たしい。そしてそれと同時に、サトシがもう“男の人“になっているのだと感じてドキドキしてしまうのだった。
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