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    greentea

    @greentea_gogo

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    greentea

    MENU2022年9月のイベントで頒布のマヴェルス本(全年齢)の冒頭部分です。最後はハッピーエンドで終わります。
    マヴェルス「声をきかせて 僕を愛して」 別離の時はいつだって突然訪れる。俺にとってのそれは父さんが最初だった。小さかった俺は、突然無くした力強く抱き上げてくれていた腕の不在を、成長と共に思い知されていった。そして次は母さん。マーヴや父さんの友人たちが助けてくれていたけれど、それでも大変な思いをして俺を育ててくれた母さんが父さんのいる場所に旅立った。
    俺が働けるようなったら楽な生活をさせてあげられると思っていたし、いなくなるなんて思ってもいなかった。だって、父さんが突然死んで家族が一人減った俺の未来で母さんまでいなくなるなんて、そんな悲しい事があるなんて考えたくも無かった。でも、実際にそれは起こる。
    体調を崩しがちになった母さんを説得して病院に連れて行った。ただ風邪が長引いてるだけだと笑う母さんが心配だったから。頭の隅っこで長く患うような病気に罹って、しかも治る見込みがないと、そんなどこかのドラマのような事が起こったらどうしよう。でもそんなことが自分の身に実際に降りかかるわけがないと、漠然とそうも考えていた。でも、その時は訪れて、母さんもいなくなった。
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    MENU4月9日のオフイベにて頒布予定のハンルス本のサンプルです。
    価格1,000円、文庫、本文116P、再録込みとなります。
    よろしくお願いします。
    愛に飛ぶ準備は出来ているか 任務後の仲間たちの顔は晴れやかで、トップガン卒であり空の実力者だと自覚のあるものたちでもかなりのストレスとプレッシャーがかかっていたのがその表情から分かる。任務を達成できるのか、だとしても仲間と生きて帰還できるのか。紆余曲折があったものの、結果として任務は成功して誰も欠けることなく全員が生還することが出来た。
     喜びと解放感からハードデックに集まるやつらのビールを美味しそうに飲む様は楽しそうで、店内に流れる曲に合わせて体は揺れている。さっきまではルースターのピアノと歌声が周囲のコーラスと一緒に聞こえていたが、今ではジュークボックスの味のある音と笑い声が響いている。
     音楽の中心だったルースターであるが、店内を見回してもその姿は見当たらず。だが帰った様子もなくさてどこへ行ったのかと視線を巡らせると、窓の向こうに色鮮やかな布の端が見えた。それはルースターが来ていたアロハシャツの柄で、窓から顔を覗かせると人気の無い店外に置いてあるイスに座って海をのんびり眺めるルースターがいた。
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    DONEサンタへの願い事を話すマヴェルス。ルス視点の語り口調なので構成が独特です。
    クリスマスの願い事 小さい頃からサンタさんへのお願いって決まってたんだけど、いつもそれが叶ってたからずっと本物のサンタがいると思ってて。勿論、朝起きた時に枕元に置いてあったプレゼントは嬉しかったし欲しかったものだったんだけど、本当の願いごとって他の人に言ったら叶わないって誰かから聞いて、母さんにも言ってなかったんだ。ん、ちょっとマーヴ、変な手つきしないでよ。さっきまでシテたじゃん。俺疲れたからもうしないよ。……、起きたらマーヴの運転する車で買い出しに行くって約束だろ。大人しくしてて。ん? あぁ、それでね、願いが叶ったって話の続きなんだけど、流石に母さんがいなくってその頃にはサンタはいないって気が付いたんだけど、それでも毎年お願いしてたからジンクスっていうのかな、お願いするのは続けてたんだ。マーヴが願書を抜いた後に、……マーヴ、マーヴがした事なんだからね、そんな顔してもだめだからね。で、マーヴと離れてた間もなんとなく願い事はずっとしてた。内容は変わってないよ。多分意地だったんだと思う。あぁ、なに? いい加減どんな願い事だったか知りたい? ん~、これからは口に出した方が叶うかもしれないしね。『ぼくのだいじなマーヴがぶじにかえってこれますように』ってお願いしてたんだよ。小さい頃はサンタさんに。大人になってからは空に見える星と両親に。はは、マーヴなんて顔してるの。泣かないで。ほら、こっちして俺の事抱きしめてよ。もっと、もっと強く……。
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    greentea

    DONE学生AUのつもりのアイ主未満チョコレート色に染まる指先に出来た傷を消毒して手当てをする。大人しく手当てをされる男は子供の様に頬を膨らませて、少し恥ずかしそうに指先をじっと見つめていた。
    「少し紙で切ったくらいで、アイブスは大げさだ」
     そう拗ねる男にこちらも言い返す。
    「そう言って、傷が気になって弄って化膿させたのはどこのどいつだ」
     そう返してやれば、ばつが悪そうにもごもごと口の中で文句を言うが、それもすぐに収まった。こっそり男の顔を見ると、いじけた様子でそっぽを向いていて、小さい頃と変わらないなとひっそりと笑った。
     変わったところと言えば、あまり泣かなくなったところかもしれないと胸の中で呟きながら寂しさがよぎる。何かあると自分の名前を呼んで助けを求めていたのに、最近はめっきりとそんなことも無くなり、お互い成長をしたのだと思いつつもいつまでも頼られていたい自分がいた。
    「さぁ、出来た」
     手当の終わった指先を解放すると、確認するように指を動かしたあいつは礼をすると言って自販機に飲み物を買いに行った。離れていった久しぶりの体温を確かめる様に手を見つめる俺には、あいつが手当てされた指先に嬉しそうにキスをしているだ 518