43,800時間「エウリノーム。ベルの容態はどうだ」
実り豊かな小麦畑を連想するような黄金色の髪をたたえ、それを引き立てるかのような漆黒に全身を包んだ長身の男が、相対する同じく長身の男に問いかける。
「どうもこうも。相変わらずだ」
「そうか」
「すまないな、あちこち治せそうな者を探してはいるのだが」
「以前新しく連れてきた医者はどうだった?」
「まだ成果は出ていない。ベルゼブフは相当特殊な状態のようだ」
「そうか」
ふたりの会話は淡々と取り交わされる。お互いに相手がどう答えるのか、はじめから分かり切っていて、ただ形式的に状況確認をしている、そんなやり取りだった。
統一議会が開催される直前。最後にやってきた八魔星のひとり、サタンは議場に到着するなりエウリノームに尋ねた。もはや毎回恒例となったこの会話は、果たして何度目に交わされたものだろうか。ベルゼブフが時間の多くを眠って過ごすようになってから、どれほど経過しただろうか。彼は今回の議会にも姿を現すことはできなかった。
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