梅と氷砂糖きっかけはなんてことない。
二人で入ったスーパーに梅酒を作るための品が一式陳列していたからだった。
君、梅酒好きだよね?
そんな問いかけにまあ、と素っ気なく感じる返事を返すとその男はかごに品物を躊躇わず入れていった。
「…で、なんで僕の部屋で作るんだ」
「え?梅酒が好きなのは君だし。君のために買ったんだし」
そう言って僕のアパートの台所でフィガロは準備を始めた。
「お前の家で作ればいいだろ…」
「うーん…だってこうすれば君の部屋に飲みに来る口実もできるでしょ?」
口実も何もいつも押しかけるくせに…、とは口に出さずはあ、とため息をついた。
「どうしたの?疲れた?疲れた時には糖分だよ。いる?」
はい、と目の前に差し出されたのは氷砂糖。
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