今日も鴨川ジムは練習生と選手たちが一心不乱に練習に励んでいる。私はジムの端で活気のある声や音を聞きながら、使われた道具を掃除しつつ、整理していた。使い込まれたものは、修繕や交換しなければならない。そういったものをまとめて、箱に詰めていた。
作業が一段落して、箱を抱えて立ち上がった瞬間、すうっと血の気が引いて視界の端が暗くなった。ああ、立ちくらみだ。このまま耐えればじきに治るだろうけど、しゃがんでしまった方がいいだろうか、どこか他人事のように状況を見ていた自分が迷った束の間に、足元がふらついて身体が後ろに傾いた。なんとか足を後ろに出そうとした瞬間、何か硬いものが背中にぶつかった。
壁のようなものにそのまま身体を預けていると、じわじわと頭に血が巡っていき、次第に明るく開けていく視界に、練習風景がはっきりと映ってきた。くらくらとしていた感覚もほぼ消えたので息を吐くと、上から低い声が降ってきた。
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