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    ナンデ

    @nanigawa43

    odtx

    何でも許せる人向け 雑食壁打ち

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    POIPOI 45

    ナンデ

    DOODLE
    私の彼氏は餃子を焼いてる 餃子を包む間、子どもは彼氏が面倒見てくれる。
    「また餃子?買ったほうが安いだろ、早いし」
    「キャベツまたもらったんだもん。ひき肉も安かったし」
    「また?隣のばあさん?」
    「そう。趣味でね、畑やってるんだって。いいなあ、そういうの」
     市村は言いながらも手を止めない。手元のボウルから餃子餡をスプーンですくう。すくった餡は皮にのせる。スーパーで50枚158円の餃子皮。特別モチモチもしてないし、パリッと焼けるようにもなってない、普通の餃子の皮。
    「ああーん、ああーーん」
    「ほら、山本さん。泣いてるよ」
    「あ、ああ。ほら……どうしたぁ?ママかぁ?ママにタッチ交代するかぁ?」
    「ダメ。ママは今餃子包んでるから」
     スタンダードな包み方だと破れてしまうから、半分に折って、端と端を持ってくるりと丸めて止めるだけの帽子型。これなら大して技術もいらないし、50枚包む間に子どもがオムツを濡らしても待たせないで済む。何しろ市村の彼氏は、子どものお守りと言ったら下手くそな抱き方でオロオロしながら揺れて、赤ちゃん言葉であやすことしか出来ないし、する気もないのだ。ましてやオムツ替えなんて「無理」の一言だ。汚い。人の排泄物に触るなんて無理。市村はそれを聞く度に、でもこの子って素は山本さんがいつもおしっこ出すとこと、同じところから出てるんだけど、と思う。思っても言わない。機嫌が悪くなるから。
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    ナンデ

    DOODLEマサ→ホプ
    だいすき、だからどうかずっと 父親が残したのは海を渡った先にある古びた一軒家だけ、と分かった時、ママは泣きも恨みもしなかった。
    「クヨクヨしてたら、パパが悲しんじゃう」
     そう言って埃にまみれた窓を開け、真っ黒な床に箒をかけ、おれはというと家の外、門にもたれ掛かって口を開けていた。庭に住み着いていたスボミーたちは小さくて何の役にも立たない新しい住人であるおれに優しく(と言うのもママがスボミーたちを先住民として扱い追い出さず、ブラッシータウンで買ってきたきのみをひとつふたつと放ってやったからなのだが)ふるふる身体を震わせてはおれのほうを向き、太陽のほうを向き、ポケモンながらにいっちょまえにお兄さんお姉さんぶっている。
     おれは門の向こう側、ママのこしらえているおれの新しいおうちの外に全く知らない、見たこともない緑いっぱいの世界と、ガラル訛りがひどくっておれではとうてい聞き取れない言葉を話す大人たちがウールーを追いかけ回すのをぼうっと見ていた。ああ、せかいはなんてひろいんだろう!哀しいかな、齢四歳にして思い至ってしまった境地に、幼い身体は耐えられず、懐かしいホウエンの空を思い浮かべて涙をぽたりぽたりとこぼしてみたりもした。
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    ナンデ

    DOODLEドブ兄 出所後に兄を訪ねてくるドブ 甘め
    ずるい奴に惚れたバツ 双子の警察官として、それなりに有名だった。と言っても何も全国区のテレビや雑誌にでた訳では無い。警察署の出している会報に小さな写真付きで載ったり、交通事故防止の講演にふたりで呼ばれ昔話をしたり、そういった人目につく仕事が普通の警察官よりもほんの少しばかり多かった。双子だから覚えられやすく、また双子が警察官を目指すきっかけになった両親の死と今日までの日々がドラマや小説のようだった。新人の時から目をかけてくれた上司などはふたりのことを「えらい」「今のヤツらには珍しく信念ってやつを持ってる」と飲む度に話した。
    「それがお前の弁解ってわけ?」
     大門が晴れてシャバに舞い戻ってから五年、遅れてドブもやっと刑務所の臭い飯から逃れられた。もう来るなよと看守たちから笑って見送られたその足で向かったのは今や引退し安穏と隠居生活を送っている黒田の元でも、未だ刑務所で規則正しい生活を強いられているヤノを今か今かと待っている忠犬たる部下である関口の元などでも、今はもう昔の女である白川の元でもなく、共犯者としてシノギを幾度も共にした大門堅志朗の元だった。
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    ナンデ

    DOODLE関ヤノ 捏造モブ視点 キスの日
    結婚式は来月、あいつの席は用意してない 高校のサッカー部に憧れてるやつが居た。真面目で規則をきっちり守るやつで同輩にも後輩たちにもみんなあの人がいるとサボれないと口々に言っていた。大柄な身体を駆使したパワープレイの中にも、あいつの生真面目さが出ていた。粗野なだけじゃない、荒いだけじゃない、プレイングの美しさってやつがあったよ。それにキチンとやってる奴には優しかった。俺たちは慕ってくれる二年たちとは仲良かったけど、ちょっと一年たちとは折が悪くてさ。上手い奴が多くて。全中で良いとこまで行った奴とか……。まぁ、要はナメられてたんだよな。弱い先輩の言うことなんか聞いてられっかよみたいな雰囲気があって。俺たちも一年のこと嫌いでさ。上手い下手関係なく敬意は払えよな、みたいな。でも関口だけは違ってさあ。何だろうな、ナメてる態度は許さないんだけど、プレイは純粋に上手いんだから先輩とか関係なく見習うべきだ、みたいな。子どもの割り切り方じゃ、無かったな。だから一年たちもあいつのことは好きで……。でも大学進学と同時に上京して、連絡はそれっきり。一回だけ、同窓会に来たかな。本当に卒業してすぐの、飲み会と大差ないやつだよ。年末の帰省時期にやって……。でも、その後あいつの父親の会社、潰れちゃってさ。え?あ、そうそう。社長だったの、父親。そんなでっかい会社でもないけどね、羽振りは良かったよ。あいつはそんなに鼻にかけないやつだったけど。で、まぁ、デッカイ家も差し押さえられてさ。なんか悪いことしたらしくてね、脱税だとかなんだとか地元じゃ結構なニュースになって、あいつも地元に帰る場所なくなって……大学はどうなったんだろう。誰も連絡とれなくて知らないんだ。もちろん、在学中は連絡先、知ってたよ。でも父親の事件があった時にサッカー部だった奴らが心配して、軒並み連絡しようとして……誰も通じなくてさ。俺もだった。なんだろ。悲しかったな、あれ。ずっと気になってる。幸せになっててくれるといいなって時々思うよ。いい奴だったから……。
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