森に棲むドラゴンと生贄の話「広大な大地にさんさんと照り付ける太陽」
これはあくまで良いときの表現だ。
今のこの状況を正しく言い表すならば
「枯れ果てた荒地に全てを焦がしつくすような太陽」
これが妥当なところだろう。
生まれてからほぼ初めて見る外の世界に対しての感想はそれくらいだった。
今日はこの国にとってとても大事な日らしい。
この干ばつを収めるための儀式をするのだ。
朝からにぎやかな音楽やら、おいしそうな料理の匂いやら、人の活気に満ちた声がごった返している。
―――――うるさい
城の高台から迷惑そうに国民を見下ろす獅子の子供は、外の喧騒に思わずぺしゃりと小さな耳をたたんだ。
叶うことならばこの目も閉じて、いっそのことなら部屋に引きこもってしまいたい。
5357