命綱今月の仕送りと支出を書いた帳面の前、うなる学徒が一人。
成歩堂龍ノ介はどうすれば寄席に行く回数が増やせるか必死に計算していた。
期間限定の菓子も食べたいし、買わねばならぬ教材もある。
多少の見通しをたて、これ以上は考えても仕方がないだろうと帳面を閉じる。
気が付けば部屋の中が薄暗い。
今は何時だろうとポケットの中の懐中時計を取り出し、蓋を開けた。
「考え事は終わったのか」
「うわぁ!」
背後から急に声をかけられて、驚いた拍子に懐中時計を放り投げてしまう。
声の主、亜双義一真はすかさずそれを受け止めた。
「いつからいたんだ?」
「結構前からな」
来客用、といっても最近は亜双義用と化した平べったい座布団に胡坐をかき、
気がつかないとはたるんでいるぞ、と笑う。
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