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    ななめ

    創作BL(@naname_336)と
    二次創作(@naname_line)。

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    ななめ

    DONEいつもと違う/いつも通り【アキラとマサ】

    世話焼き心配性×どんくさい
    (2021.02.27)
    正良がこたつに入りながら「今日の私はいつもと違うんですよ」と言った。
    「えっ、そうなんだ」
    「アキラさん分かりますか?」
    晶は手元の雑誌から視線を上げて正良の顔を見た。正良は口元にわずかな笑みを浮かべ、正面から晶を見つめてくる。その表情にはこれといった歓喜も憤怒も見当たらない。いつも通りだ。髪はわずかにはねて、いやあちこちはねている。これもいつも通りだ。服装はといえばお気に入りのカラシ色のカーディガンだし、シャツの襟元のボタンは外れている。手に何か持っているわけでもない。
    正良が『晶なら自分のことを何でも分かっている』と、いささか過大な信頼を置いているのは知っている。晶としては期待に応えてやりたいところだが見た目の違いでなく内面だとしたらさすがに分からない。晶がなんと答えようか迷っていると、正良が「正解したら一緒にお散歩に行きましょう」と言った。珍しいなと思う。正良は家にいるのが好きで自分からは外に出たがらない。いつもは晶がなんやかんやと理由をつけて――例えばおやつを買いに行こうだとか、ジュースを買いに行こうだとか、要するに食べ物でつって散歩に連れ出すのだが――いや?つまりそういうこと 863

    ななめ

    DONEバレンタインのアキラとマサハッピーバレンタイン

    本を読む晶の向かい側で、正良はこくりこくりと居眠りをしている。こたつの温かさとカーテン越しの柔らかい光が眠気を誘うのだろう。
    時計の針が十時を指した。
    晶はこたつから出ると台所へ向かった。コーヒーメーカーをセットし、隠しておいた箱を取り出す。出来上がったコーヒーと箱を持って正良の元へ戻ると、居眠りしていたはずの正良が起きていて、まだ眠そうな目で晶を見上げた。こたつの上にはさっきまで無かった箱が置いてある。晶が台所にいる間に持ってきたのだろう。同じことを考えたらしいと知って晶の頬が緩んだ。
    「お十時にしようか。あとこれ、バレンタインだから……」
    こたつの上にコーヒーを置いてから、箱を差し出す。正良は素直にありがとうございますと受け取って、今度は自分の番とばかりにこたつの上の箱を晶へ差し出した。
    「ええと、これはバレンタインデーのチョコレートです」
    「ありがと……う?」
    受け取ろうと箱を掴んだのだが、正良が箱を掴んだ手を離してくれない。両側から箱を持つ形になった。どうしたのかといぶかしんでいると、
    「あの、これ、ドライフルーツが入っているチョコレートなんです」
    と言 602

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    DONE季節への招待状【堀と川端】
    ワンライお題「招待状」で書いたものです。
    僕らはみな、新しい季節への招待状を受け取っているのだ。

    *

    中庭のベンチは読書に最適な場所だけれど、外で過ごすには最適な季節は過ぎようとしていた。僕は抗うように赤いマフラーを首に幾重にも巻きつけて、芥川さんから借りた本を膝の上で開いた。『辰っちゃんこも好きだと思うよ』そう言われて渡された本は図書館の一般開架から誰かが借りてきたもので、司書さんからは一度きちんと返却してから読みたい人が借り直すようにと言われていたものの、僕らは本を回し読みすることに慣れきっていた。
    読み終わったら芥川さんと語ろう。
    それを楽しみにしていたはずなのに、ページをめくる手は少しも進まず、僕の目は舞い落ちる木々の葉をぼんやりと眺めていた。あれは桜の葉だ、花びらよりも重く宙を切る。心は軽やかとは言いがたく、池に落ちた葉のように沈んでいった──

    「堀さん」
    ふいに声をかけられて僕は飛び上がった。
    「は、はい。……あ、川端さん」
    川端さんは少しの間、目の前に立ったまま静かに僕を見つめていたけれど、そっと隣に座り背筋を少し丸めるようにして正面を眺めた。まるで僕が見ていたものを確かめるように。
    川端さんは前を向いたま 845