その日から、二人ぼっちの科学王国の建国が始まった。毎日素材を集め、試行錯誤を繰り返していく。ただし、残念なことに互いに肉体労働は不得手だったため、素材回収だけで一日が終わることもままあった。
ドイヒーな強制労働、などと嘯きながらも、その日々自体を苦痛に思ったことはなく、千空が作り出す様々なアイテムに、ゲンは内心胸を踊らせていた。
千空は次々と、科学で便利なものを作り出していった。
それが広まり、少しずつ周りに人が増えてきて、賑やかになっていったけれど、依然として麒麟も王も現れる気配がなく。
周囲の村や里は、今も荒れ放題だった。
二〇年もその麒麟はなにをしてるんだろう。どうして戻ってこないんだろう。
……俺がもし麒麟だったら、すぐに千空ちゃんを選ぶのに。そしたら、千空ちゃんの望みを叶えてあげられるのかなあ。
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