手袋越しの戯れ
図書室の長机に横並びに腰掛け、ヴィルと魔法史のレポートをすすめる。彼とはよくこうやって、ともに課題に取り組んでいた。
ふと、ヴィルの手が私の左手に当たる。ちらりとヴィルを見るが、特に気にしていない様子で教科書に目を通している。当たっただけだろうか。ヴィルはすぐにレポートの続きを始めたので、私も特に気に留めることなく課題を続ける。
「……?」
まただ。そんなに窮屈な広さでもないのに、ヴィルの右手は再び私の左手に触れる。なにか私に要求しているのだろうか。ヴィルの手が離れたあとも、私はしばらく自分の手を見つめた。
ヴィルは何事もなかったかのように課題を再開する。その手元からヴィルの横顔に視線を移すと、笑みをこらえるように口角がキュッと上がっていた。
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