晴れたらいいね 荒涼とした大地。遠くでは雷の音が耐えなかった。
自分は名もない、体も影すらもない存在のまま、しかし、ここに在るという意識のままに「それ」は空中を漂っていた。
「お前、意識があるのか!?」
突然に声を掛けられ、風任せとはいえ、ある程度は自分で制御出来ていた動きが止まる。
「あるんだろ? 意識。なるほどーこれが――種、か」
その声は近付いてきて、ないのかあるのか分からない自分の体を触ろうとし、しかし、文字通り霧散してしまうことに不満を述べた。
「目、開けろよ」
目? それは何だろう。
「目だよ、目。魔力が足りないなら、ボクの力を分けてあげるから」
途端、自分の核へと流れ込んでくる強大な魔力。〈目〉を開けるどころか、自分が消し飛んでしまう。私は咄嗟に根を張り、その場に留まると面白おかし気な声が届いて「腹ただしくなる」……そうか、これが怒りの感情か。
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