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    yuruyuru_oni

    @yuruyuru_oni
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    yuruyuru_oni

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    ある方のリクエストで書いてたごんみき。
    ふたりがこういう馴れ初めだといいなぁ、という願望ゴリゴリの一品。

    それは、檎がひと仕事終えて部屋を出た時の事だった。廊下に出ると見習いの詰める部屋からわいわいと賑やかな声がする。気になってふと覗き込むと、野干の中でもとびきり器量良しだと店に入った三兄弟が膝を突き合わせていた。
    「なんじゃあ、賑やかじゃの」
    「あっすいません!邪魔しちゃいましたか……」
     葉之兵衛とかいう名前だったか、唯一つり目の兄弟が檎に頭を下げる。その手には数枚の端切れがあった。
    「いや、構わんよぉ。……何しとるん?」
    「雛人形を作ってやろうと思って……」
    「俺たち、妹がいるんで」
    「ほーん……」
     照れ臭そうに花兵衛だったか、が笑う。雛人形を作る、ということはそこそこ歳が下の小さな妹なのだな、と思った檎だが、雛人形の着物にするにはその手の端切れは些か地味な気がした。
    「んー……。お前ら、人形の胴体こさえるまででちぃと待っとれ」
     そう言うと、檎は部屋を後にした。
     数分後、戻ってきた檎の手には煌びやかな布地が大量に握られていた。
    「ほれ、雛人形の着物にするんならこれぐらい豪勢なんがええじゃろ」
    「わぁぁぁ!すげー!」
    「えっどうしたんすかこれ!」
     わっ、と歓声をあげて三兄弟が寄ってくる。
    「見世の姐さん方にちょいと、な。もう着らん衣装やら汚れの落ちんで処分せんといかんやつの使えるとこをちょいちょい、と」
     鮮やかな布地は明らかに高級なものだが、端切れにするしか使い道がないようなものばかりだと言って布地を手渡すと、檎はごろりと畳に寝そべる。
    「それで妹さんとやらに別嬪の雛人形こさえたれ。きっと喜ぶじゃろ」
    「はいっ!ありがとうございます!」
     ああでもないこうでもないと布地を吟味する三兄弟の声が檎の耳に心地の良い子守唄のように聞こえていた。
     その後、無事に完成した雛人形を渡された仔狐は大層喜び、その手伝いをした檎にも大層懐いた。
     
     それから長い時が流れた。幼い仔狐は美しく成長し、世を和ませ楽しませる歌姫になった。
     美しい歌声は富をもたらしたが、彼女の自宅には少し古びた手作りの雛人形が毎年飾られている。
     それを見つめる彼女の瞳は恋する乙女のそれであった。
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