冷たい温度冷たい温度
「今晩は、眠れそうな気がします。」
夕食後、談話室で晶の膝を枕に、ソファでごろりと寝そべっていたミスラが呟く。晶がその柔らかな髪を梳く度に、目を細める彼はまるで猫のようだ。
今この部屋には、二人しかいない。そのせいかいつもより静けさを感じるが、不思議と気まずさはなかった。もう短くもない時間を共に過ごしているお陰だと、そう思いたい。
晶はミスラの言葉に、視線を賢者の書から動かす。
「それは良かったです。もう部屋に戻りましょうか?」
「俺は別に、ここでも良いですけど。」
「駄目ですよ。ちゃんとお風呂に入って、着替えて寝た方が、絶対気持ちが良いです。」
「面倒だな…。」
魔法一つで、体を綺麗にすることも、着替えることも容易いが、今はそうした気分じゃないらしい。うだうだと晶の膝の上でごねる彼だったが、ようやく身を起こす。
1972