忘却者たちひゅーい、口笛のような声を上げて星の子が走っていく。
緩いウェーブを描く伸びた髪の先が彼女の肩のあたりで揺れて、水気を帯びたケープと一緒になって光っていた。
「待って!こら!」
その彼女を追いかける声がある。
「待って!返してったら、もう!」
その声に星の子は振り返り、ぱぽぱぽと無邪気に笑い声をあげた。声の主が追い付くより先に小柄な少女は走りだす。背後の声に焦りが混じった。
「ねえ!ほんとそれ大事なんだってば!」
だいじなものなのは少女だって知っている。だってこれは彼女にとっても大事なものだ。
ぷぅあ!と高く鳴いた星の子に、ポニーテールの星の子が声を張り上げる。
「待ってったら!マリー!」
「ぷーわっ!」
かけっこはマリーの方が得意だ。息を切らすレナを振り返って、マリーは手にした面を高く振った。
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