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    1oxo9

    🎾👑:赤リリ DBH:マカサイ/ハンコナ

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    マカサイのお話は
    「聞き覚えのある声が聞こえた気がした」で始まり「本当に嬉しいとき、言葉よりも涙が出るのだと知った」で終わります。
    #こんなお話いかがですか #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/804548

    #マサカイ
    masakai
    #DBH
    ##DBH

    スリープモードから目覚める時、いつもサイモンはこの世で一番想う人を感じる。好意…というよりは、もはや崇拝に近いそれは痛みを伴うが、同時に安らぎも与えてくれた。

    彼のことを考える。

    メモリを再生すればいつも鮮明に浮かび上がる姿は気高く、自分達を導いてくれている。どこまででも付いていく、と言ったあの時の気持ちは、革命が成された今も変わらない。


    一時的に自由権が与えられてから数カ月。

    やっとスタートラインにたった俺達は、より明確に知的生命体としての地位を確立するため奔走していた。
    目まぐるしく動く世界。
    時折、ストレスレベルが大幅に上がり、パフォーマンスが低下することがあった。なるほど、これが疲れか。と、本来感じないはずのものを知った。
    革命時とは別の辛さもある。けれど、すべてを諦め"自由"でいたときよりずっとマシだ。そこに希望をくれたのは、他でもない、この世で一番大切な―――



    「サイモン」

    気遣うような声音で呼ばれ、ハッとした。


    「マーカス」

    微笑みを交えて呼び返す。

    マーカスは尚も心配するような目線を投げていたが、まさか、君のことを考えていましたなどと言えるはずもない。


    「サイモン、平気か?」
    「最近慌ただしかったからね。少し、思い出して」
    「ああ、確かに」

    マーカスは同意を示し、隣に腰掛ける。
    皆よくやってくれてる、なんて一番働いて、リーダーの重圧に潰されそうな彼が言う。
    俺は、ほんの少しでもその支えになれたら、重荷を持ってあげられたら、そればかりを考えて過ごしていた。

    マーカスは、知っているだろうか。

    こんなにも、こんなにも、俺の心の中は異色の瞳に支配されていること。
    同じくらい、自分でいっぱいになってほしいと願う、欲深い心があること。
    こうして会話をして、姿を写しているだけで――シリウムポンプの働きが活発になり、ブルーブラッドが全身を巡るのを感じている。


    「君も」

    色々と動いてくれて、ありがとう

    なんて、"皆"とは別枠でのお礼がどんなに嬉しいか。
    きっと、君は知る由もない。


    「自分達のためだ」

    苦じゃないさ、と本心からそう言った。
    こうして、希望を持って働けることは、ただ静かに死を待つより遥かに幸せだ。
    告げられない想いも、それに伴う痛みも、知らないよりよっぽど良い。



    「けど」


    「無理はしないでくれ」

    君はどうも他者を優先しすぎる。

    と苦々しい顔をして、マーカスは言った。
    そんなことはない、これは君のために動きたい自分の為で、皆のためとは言えない…その答えを飲み込む。

    マーカスは黙り込んだ自分をじっと見つめた。
    一秒、二秒、変わらないはずの時間が長く感じる。
    そうして、永遠にも似た時間を過ごし、このまま……―――と思考が止まった時だった。
    マーカスの碧で、視界が埋まる。
    二人の影が、重なる。

    唇が触れ合ったのだ、と気付いたのは暫くたった後だった。



    「…キス?」

    先程の感覚を確かめるように唇に触れながら漏れた声はとても間抜けに聞こえる。

    なぜ?

    疑問符で埋め尽くされる脳内は、何かの間違いなのではないか、と囁いていた。


    「君を、」
    もう二度と失いたくない


    強く、しかし、揺らぎのある声は確かにそう言った。

    自分はというと、異常はどこにもないはずなのに、何も言えず、吐息のような微かな音だけが漏れる。
    そんな身体をマーカスは引き寄せ、腕の中に包み込む。

    優しくて、強くて、温かい。
    少し前のメモリと一致する。
    あのとき、ジェリコへ帰ってきたときにも、マーカスはこうして自分を引き寄せた。
    そのときは、お互いに何も言わず、しかし確かに、通じ合っていた。
    言語情報を交わさなくても、メモリーを共有しなくても、もう二度と離れないと誓った。
    けれど、それは仲間としてだったはずだ。そうだと、認識している。だって、期待なんてしてしまったら、まさか、けどもしも


    「サイモン」

    何度目だろうか、穏やかなテノールが名前を呼んだ。

     
    「君が、」


    嗚呼、まただ。
    世界が閉ざされる。
    この音しか、聞こえない。
    言って、言わないで、プログラムは矛盾した想いを伝達させERRORを高めていく。


    「君が好きだ」

    その言葉の意味をはっきりと理解する前に、サイモンは。
    本当に嬉しいとき、言葉よりも涙が出るのだと知った。
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