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    sgm

    @sgm_md
    相模。思いついたネタ書き散らかし。
    ネタバレに配慮はしてません。
    シブ:https://www.pixiv.net/users/3264629
    マシュマロ:https://marshmallow-qa.com/sgm_md

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    sgm

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    ジェイド・ダイナスティの冒頭の御剣の術を見てたら、あれ、割と剣の上でいろいろできるでは?てなりました。
    夜空でかち合う曦澄。

    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation
    #曦澄

     思い立ってしまってから行動に移すのは自分でも驚くほどに早かった。それほどまでに切羽詰まっていたということか、と三毒の先を姑蘇の方面へと向け、空高く飛びながら江澄は自嘲した。
     ここのところ忙しくて、三か月ほど藍曦臣に会えていない。仕事でも私事でも。文は交わしているし、三か月会えないことなど珍しくもない。そもそも金丹の力によって加齢は一般の人間よりも緩やかなのだから高々三か月会えない程度大したことではない。けれど、色々と重なった結果、江澄は疲れてしまった。
     金凌が蓮花塢に訪れていないため、手軽な癒しである仙子も吸えない。かといって仙子で癒しを取りたいから蓮花塢まで来い、などと金凌を呼び出すわけにもいかない。
     ならばせめて、顔見知りの商家で飼っている犬で癒しを得ようと視察ついでによれば、ちょうど今発情期で誰彼構わず足にしがみついて腰を振るので、頼むからそっとしてやってくれ。宗主の足に自分の犬がしがみついているのなど申し訳なくて見ていられない、と泣きつかれてしまっては無理に近づいて撫で繰り回すわけにはいかない。
     手頃な癒しを取り上げられ、仕事は山済みで、ついでに今日の夕餉で愛用の茶杯にひびが入った。別に、高価な茶杯ではない。亡き父母や姉の使っていた遺品というわけでもない。ただ、使っていたら昔藍曦臣に、「いい茶杯ですね」と褒められただけの、町に出れば同じ柄のものをまた買えるような茶杯だったが、それが止めとなった。
     藍曦臣の顔を見て癒されたい。そう思ったとたんに、江澄は三毒を握りしめて御剣の術を使っていた。
     到着するのは、ぎりぎり未の刻に間に合うかどうかだろう。顔さえ見れればよかった。時間があれば一言二言交わすだけでも。それすら叶わなければ、ただ山門の下で、階段を見上げて、ここにいるんだな、と確かめられればよかった。何も抱擁したいだとか、口付けたいだとか、ましては抱かれたいなどとは思っていない。明日も朝から蓮花塢を駆けずり回ることになるのだ。そこまで暇ではない。
     できる限りの速度を上げて剣を進めれば、眼下の景色は濁流のように流れていく。町や村の灯りが消えて、ちょうど姑蘇と雲夢の中間に差し掛かった頃だろうか。前方から同じように御剣の術を使った仙師の姿が見えた。
     やって来た方面と、夜の空に月明りを反射してうすぼんやりと光って見える白い衣は、姑蘇藍氏の者だろう。江澄は速度を緩めた。もしや、藍氏に何かあり、急ぎの伝達をするためにどこかに向かっているのだろうか。すっと江澄の頭が、冷静になり雲夢江氏宗主の物に切り替わる。あちらも、江澄に気が付いたのか速度が緩まった。五歩ほどの距離まで近づいたところで、相手の顔が双方分かり、ピタリと互いに剣を止めた。姑蘇から剣を飛ばしていたのは、藍曦臣だった。あちらも驚いた顔をしている。江澄は探るようにゆっくりと剣を進めた。同じような速度で、あちらも近づいてくる。
    「江澄。その、こんな時間にどうかしたんですか? 何か、江氏に問題が?」
    「俺は……。いや、貴方こそどうしたんだ。こんな時間に」
     ただ、貴方の顔を見に、と言えずに口を噤んでしまった。改めて考えるとどうにも行動が軽率に思えて来た。十代の恋に浮かれた小僧でもあるまいし、恋を始めたばかりでもあるまいし。
     藍曦臣の問いに問いで答えてしまった。
     藍曦臣の視線が泳ぐ。常にない彼の表情に、疲れた江澄の思考が負に向かう。
     何か、悪いことだろうか。
     それとも自分とは別の情人がすでにどこかにいて、その相手に会い行くつもりだったのだろうか。藍曦臣に褒められた茶杯にひびが入ったのは、すでに藍曦臣の心が自分には向いていないことを示していたのだろうか。だとしたら、顔を見たいと飛び出してきた自分のなんと滑稽なことか。
    「その、あなたの、顔が一目でもよいから見たくて……」
     目を伏せて、恥ずかしそうに藍曦臣が告げてくる。江澄は瞬きを繰り返した。
    「俺の、顔?」
    「あなたが忙しいのは分かっているんですが。その、愛用の筆の毛がボロボロになるし、忘機の兎が思いもよらないところにいて踏みそうになるのを避けて転びそうになるし、おろしたばかりの墨が折れてしまって、あぁ、もうあなたの顔が見たいな、と。で、江澄。あなたはどうしたんですか。どこかに行く途中、なのかな」
     困ったように眉尻を下げて、藍曦臣は問うてくる。藍曦臣の言葉を思い返すと、自分と同じように大したことではないが、良くないことが続いたようだ。転びそうになる藍曦臣など、見ものだったろうに。この人も自分と同じ気持ちだったのか、と思うとおかしくなって、喉の奥で笑った。
    「俺も、あなたの顔を見に。仙子は来ないし、商家の犬は発情期だし、茶杯にひびが入るし、あなたの顔を一目でも見れれば、いいなと」
     犬の発情期のくだりで不思議そうな顔をされたが、江澄が向かっている先とその目的を聞いて、藍曦臣が目元を弛ませた。
     あぁ、この顔が見たかったのだ、と江澄の心が満たされ、自然と口角が上がる。鼻から息を大きく吸えば、藍曦臣の纏う嗅ぎなれた香の薫りがした。
     今夜の目的がすでに姑蘇まで向かわずともかなったことに満足した。これで明日からも仕事に励めそうだと、満面の笑みを浮かべて別れを告げようと口を開きかけると、伸びて来た藍曦臣の腕が江澄の腰に巻き付いた。急に抱き寄せられ、三毒と朔月がカチリとぶつかる音が夜空に響く。
    「おい、藍渙。いきなりなんだ。外だぞ」
    「空の上、です。誰にも見られませんよ。三か月ぶりなのだから、許してください」
     ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、肩口に顔を埋められる。江澄もそっと藍曦臣の背中に腕を回した。藍曦臣の言葉ももっともで、顔が見れるだけでも良いとは思っていたが、抱擁ができるのであれば、抱擁もしたい。外ではあるが、今のところ、他の仙師が飛んでくる様子もない。江澄も大人しく藍曦臣の肩口に顔を寄せた。ゆるゆると背中を撫でられ心地が良い。だが、だんだんと背中の手が腰へと下がって来た気がして、江澄は慌てて藍曦臣の身体を離し、三毒ごと朔月から距離を取る。
    「待て、今何をしようとした」
    「何も?」
     にこりと微笑む様に、どうにも雲行きが怪しい気がして、江澄はそろそろ雲夢に戻ることにした。藍曦臣の目的が果たせたかどうかは知らないが、江澄の目的は果たせたのだ。
    「俺は、俺の目的を果たせたので、そろそろ雲夢に戻る。あなたも雲深不知処にそろそろ戻ったほうが良いのではないか?」
     じりじりと気が付かれない程度に朔月から距離を取る。だが、空の上、目印となる物がないせいで気のせいかと思っていたが、先ほどから離れているはずの距離がちっとも離れていない。朔月もじりじりと距離を詰めているようだった。
    「そうですね。そろそろ未の刻が近づいてきました」
    「そうだな。ところで、どうして近づいてくるんだ? 雲深不知処は向こうだぞ?」
    「おや? そうでしたか? 空の上だとどうしてだか方向が分からなくなってしまって困りますね」
     そんなわけがあるか。
     胸中で舌打ちをし、江澄は何も言わずに剣を全速力で進めた。何の初期動作もなく進めたのだから、さすがに藍曦臣でも追いつけまい。そう思ったのに、ふと、影が差し込む。速度は落とさずに横目で見ると、すぐ隣に藍曦臣が並走している。
     伸びて来た手が江澄の手首を掴んだ。三毒の上で保っていた均衡が崩れる。術を緩め地上へ真っ逆さまに落ちるわけもいかず、ろくな抵抗ができないままに、縺れるようにして、空にひときわ大きく浮かんでいた雲の中に二人そろって突っ込んだ。周りが濃霧に覆われる。霧の向こう側でぼんやりと月が黄色く光っているのが見えた。
     江澄は、自分の手首をつかみ、再び腰に手を回してきた藍曦臣の顔をきつく睨んだ。
    「危ないだろう! 何をする」
    「あなたがいきなり飛び出すから、つい。それに、この程度で術を崩すほど未熟ではないでしょう? 三毒聖手殿?」
     突然剣を進めたことに臍を曲げたらしい。滅多に呼ばない号で呼んできた。
    「俺は、明日も朝から仕事なんだ。それはあなたもだろう?」
    「分かっています。ですが、もう少し。次お会いできるのがいつかは分からないでしょう?」
    「誰かが飛んでたらどうする」
    「雲の中ですから、見えませんよ」
     切なげに目を細められ、頬を撫でられる。江澄は視線を彷徨わせてから俯き、小さくため息をこぼした。自分の心にもう少し素直になろう。本当は抱擁したいし、口付けたいし、抱かれたい。自分を組み敷いて、常日頃の取り澄ました澤蕪君というガワを剥ぎ取って必死に腰を振る藍曦臣を、見上げたい。
    「江澄?」
     名を呼ぶ声に顔を上げ、きつく睨みつける。あぁ、これが牀榻の上であれば「阿澄」と呼んでくるのに。
     手を伸ばし、藍曦臣の頭を掴むと、江澄は藍曦臣の唇に噛みついた。
     江澄の腰につけた江家の銀鈴が暫くの間、チリチリと微かな音をたて続けた。
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    sgm

    DONE去年の交流会でP4P予定してるよーなんて言ってて全然終わってなかったなれそめ曦澄。
    Pixivにも上げてる前半部分です。
    後半は此方:https://poipiku.com/1863633/6085288.html
    読みにくければシブでもどうぞ。
    https://www.pixiv.net/novel/series/7892519
    追憶相相 前編

    「何をぼんやりしていたんだ!」
     じくじくと痛む左腕を抑えながら藍曦臣はまるで他人事かのように自分の胸倉を掴む男の顔を見つめた。
     眉間に深く皺を刻み、元来杏仁型をしているはずの瞳が鋭く尖り藍曦臣をきつく睨みつけてくる。毛を逆立てて怒る様がまるで猫のようだと思ってしまった。
     怒気を隠しもせずあからさまに自分を睨みつけてくる人間は今までにいただろうかと頭の片隅で考える。あの日、あの時、あの場所で、自らの手で命を奪った金光瑶でさえこんなにも怒りをぶつけてくることはなかった。
     胸倉を掴んでいる右手の人差し指にはめられた紫色の指輪が持ち主の怒気に呼応するかのようにパチパチと小さな閃光を走らせる。美しい光に思わず目を奪われていると、舌打ちの音とともに胸倉を乱暴に解放された。勢いに従い二歩ほど下がり、よろよろとそのまま後ろにあった牀榻に腰掛ける。今にも崩れそうな古びた牀榻はギシリと大きな悲鳴を上げた。
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    sgm

    DONE江澄誕としてTwitterに上げていた江澄誕生日おめでとう話
    江澄誕 2021 藍曦臣が蓮花塢の岬に降り立つと蓮花塢周辺は祭りかのように賑わっていた。
     常日頃から活気に溢れ賑やかな場所ではあるのだが、至るところに店が出され山査子飴に飴細工。湯気を出す饅頭に甘豆羹。藍曦臣が食べたことのない物を売っている店もある。一体何の祝い事なのだろうか。今日訪ねると連絡を入れた時、江澄からは特に何も言われていない。忙しくないと良いのだけれどと思いながら周囲の景色を楽しみつつゆっくりと蓮花塢へと歩みを進めた。
     商人の一団が江氏への売り込みのためにか荷台に荷を積んだ馬車を曳いて大門を通っていくのが目に見えた。商人以外にも住民たちだろうか。何やら荷物を手に抱えて大門を通っていく。さらに藍曦臣の横を両手に花や果物を抱えた子どもたちと野菜が入った籠を口に銜えた犬が通りすぎて、やはり大門へと吸い込まれていった。きゃっきゃと随分楽しげな様子だ。駆けていく子どもたちの背を見送りながら彼らに続いてゆっくりと藍曦臣も大門を通った。大門の先、修練場には長蛇の列が出来ていた。先ほどの子どもたちもその列の最後尾に並んでいる。皆が皆、手に何かを抱えていた。列の先には江澄の姿が見える。江澄に手にしていたものを渡し一言二言会話をしてその場を立ち去るようだった。江澄は受け取った物を後ろに控えた門弟に渡し、門弟の隣に立っている主管は何やら帳簿を付けていた。
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