匂い②数日後
今日は五条先生が出張から帰ってくる日。
観たかった映画の続編を、『帰ったら一緒に観よう。地下室で待ってて。』と連絡が来た。
久しぶりに2人で映画が観れる。
"特別な人"の事で悩んでいたけど、この時間だけでも、自分は特別なんだと感じられた。
(俺って、面倒臭いかな)
ガチャと音が聞こえて、走って扉へ向かう。
「先生、おかえり!」
久しぶりの五条先生。勢いで抱きついてしまった。
「ただいま、悠仁。」
少し驚いた顔のあとは、すぐに笑顔に変わる。
フワッと香った匂い。
「先生、今日も香水つけてんの?」
「香水?今日は何もつけてないけど。」
「あれー」
もう一度、嗅いでみる。
香って来たのはこの間の香水ではなく、着衣の布の香りだった。
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