JAM 仕事を辞めた理由は、腐るほどあった。下戸なのを知っていながら浴びるほど飲まされたこと、クソ威張り散らした取引先に罵られながら笑って頭を下げたこと、ずっと付き合っていた彼女を抱けなくなったこと。
そんなに性欲が強くない方だとは思っていたが、いざ勃たなくなったときの絶望はとてつもなかった。人生、終わった、と思った。駆け込んだ医者には「ストレス」ですね、と予想通りの診断をされ、副作用が怖すぎる薬を飲んでは見たもののまるで効かなくて、結局最低な別れ方をした。「ごめん、他に好きな人ができた」と嘘をついての。
そんなとき、同期の人間が不幸な事故にあったのが決定的なトリガーになった。俺が行くはずの出張は訳あってそいつが行くことになり、そしてその飛行機が、墜ちた。
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