そばは五分以内に食べる。それがニキのポリシーだ。
つゆで伸びてしまう前に、美味しいものは美味しいうちに食べなきゃ罰が当たってしまう。とはいっても、サービスエリアで提供されるそばなんかは、事前にゆでられた麺を温めてつゆを注いで作られているから、既に伸びてしまっているんだけど。
夜のサービスエリアは空気が静かだ。同じバスの乗客らしい人が自販機でどの飲み物にしようか迷っているのが見える。コンビニや自販機に人が吸い寄せられていく。この短い休憩時間でそばを食べようとする人はあまりいないみたいだ。いかにもトラックの運転手といった様相の人が丼を食べているのを発見し、勝手に親近感を抱く。
止まる事なく麺を吸うニキをじっと見つめていた燐音が、視線をニキの背後の時計にうつし、立ち上がった。目で問うと、「トイレ」と一言。
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