No.17甘くない・不機嫌の理由・隣で 風見裕也は辟易していた。
最も尊敬する上司・降谷零が潜入していた犯罪組織が瓦解してしばらく経ち、ようやく後始末も済んだ頃。風見は彼と、警察庁でとある事件の聞き込みをしていた。
トリプルフェイスを演じていた降谷は、晴れてひとつの人格へと戻った。本来の彼はバーボンのような狡猾さも、安室のような爽やかさも持ち合わせた人間だったのだが――
目の前の降谷は、これ見よがしに長い足を組み、眉間に皺を寄せ不機嫌さを隠そうともしない。人前で感情を露わにするなど、彼らしくない態度に風見は気が気ではなかった。彼の不機嫌の理由は、目の前にいる二人の若者だ。
「それで、犯人に関する資料はこれだけ?」
「ああ、オレの推理によると……」
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