チョコレートはおいしい。
　甘くて、いい匂いがして、いっぱい食べたくなる。

　ナッツ類が混ざったものであれば食べ応えがあるし、果物が入ったものは香りも変わってくる。
　特に酒が入っているものがいいなと思うと悟空がチチに言ったところ、なんでもうまい悟空さにも好みの傾向があるんだべなぁと言われたので、ちょっとムッっとした心情のまま彼女のクチにも酒のチョコレートを含ませてやった。

　眼を丸く知ったチチは反射的にだろう含まされたチョコを噛んだようで、こりん、というかわいらしい音を悟空の聴覚が拾った。そしてふわりと香るアルコールの匂いがとてもおいしそうだったのでチチを抱きしめて遠慮なしに唇を重ねる。

　味わったチョコレートはとてつもなく美味くて、いつまでも味わってしまった。

「悟空さはおらには嘘はつかないだよ」

　そこだけ聞けばのろけのようであったが、

「そのかわりホントのことも言わないことがあるだな」

　続いた言葉になんといっていいのか分からなくなる。


　でもそれが、彼と彼女の夫婦のカタチだと気付けば、他者が口を出すことはできない。
　何より闘争と己を鍛えることが好きな男が、彼女の元が安心して落ち着ける場所だと我が子に零し、一途にずっと初恋の人の嫁になるのだと決めた女が「死で別たれて」も尚ずっと夫の妻で在ることを望み、男の帰る場所で在り続けた人。

　孫夫婦のふたりは、今日もせっせと農業を営んでいるが、その関係性と絆の深さは折り紙付きで、そして複雑さは当人達だけのものにしておくのが吉である。