失われた時を求めて(中編)*医療の知識のない素人による小説です。疾患・障害に関する記述がありますが、すべてフィクションです。
飛行機のタラップを降り、外の空気を吸うとムッとした東アジアの風が鼻を通り抜けていった。べっとりと蒸し暑い日本の夏。LAのカラッとした陽気とは全く違う。もう腕のあたりがベトベトしてきた気がする。譲介にとって五年ぶりの日本だ。
パスポートコントロールを抜けると、おなじみのコンビニエンスストアの看板が見えた。どこを見回しても日本語。「帰ってきた」と思う。
空港から都心に向かうシャトルバスに乗り、窓際の席を陣取った。ケータイを出して、「圏外」と書いてあるのを見て、SIMカードを入れ替えた。そして、メールの受信フォルダを開いて、神代からのメールを読み返す。
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