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    10ゲージのポイポイ

    @honey_bee_19se

    書けないものとか色々ポイポイ

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    POIPOI 89

    キメツ🔥さん生存if夢。
    鬼にされた夢主が🔥さんと一緒に鬼狩りする夢です。
    ちょこちょこアップしていく予定。

    誓い静かな夜だった。
    夢の中にいた私を起こしたのは、母の悲鳴だった。

    目に映ったのは、力なく横たわる父と、今まさに、斬られて倒れる母の姿だった。
    まるで時が止まったかのように、ゆっくりと倒れた母は、そのまま動くことはなかった。
    畳に染みる血を呆然と見つめていたら、耳障りな男の笑い声が聞こえて顔を上げると、
    そのまま横っ面に激しい衝撃と痛みが走った。

    殴られたのだ、と理解した時には別の痛みが走る。
    髪を掴まれて物のように引き摺られた。
    数人いた男達の声が途切れ途切れに聞こえる。


    殺した女。
    女も金になった。
    大した金はない。
    子供を金に。


    金と引き換えに父と母は殺されて、私は金の為に何処かへ売られるようだ。
    現実に頭が追いつかず、どこか夢の中にいるような感覚だった。


    これは、悪い夢なのかもしれない。


    縄で縛られ、荷物のように荷車へと乗せられた。
    ガタガタと揺れる中、父と母を残した屋敷をぼんやりと見ていた。



    どれくらい移動したのだろう、痛みが、じわじわと現実を告げ始めた時
    前を走っていた男が悲鳴を上げた。


    「ヒィッ!」
    「ぎゃっ!」
    「うわぁぁぁ!!」


    次々と上がる悲鳴は、どんどん近づいてきた。
    ドサドサと倒れる音もする。
    荷台を引いていた男が叫ぶ。


    「鬼だぁ!!」


    その言葉を発した瞬間に男は地面に倒れた。
    その男の胎を、何かがグチャグチャと音を立てて貪っていた。
    口の周りは血で汚れ、肌の色は青白く、鋭い爪と牙が人間ではないと告げていた。

    倒れた男が口にした言葉。
    鬼だ。

    金色に光る目が、キロリ、と私を見る。
    ボタボタと血が滴る口が、弧を描いて、割れた舌が滴る血を舐め取った。


    「ガキかぁ」


    月が、恐ろしい程に美しく見えた。
    月明かりに鬼の姿が照らされる。
    血に濡れた鬼が、ジャリジャリと土を踏み締め私の方へと近づく。


    「ガキの肉は柔らかくて美味いんだ」


    ヒヒッ、と嗤う鬼。
    恐怖で体は動かない。
    賊に襲われ、両親を殺され、鬼に喰われる。
    なんと、地獄のような夜。


    さも愉しそうに笑う鬼の腕が私に伸びた瞬間、


    「炎の呼吸、壱ノ型、不知火!」


    声と共に、目の前を赤い炎のような物が横切ったかと思ったら、鬼の頸が飛んだ。
    鬼の手は私の方に伸ばされたまま、鬼の頸がゴロリ、と地面に転がった。
    そして、そのままハラハラと崩れて塵となって消えていった。

    恐怖と驚きとで、自分の心臓の音が頭の中で鳴っているかのようだった。
    何がどうなったのか?
    鬼が死んだ?
    別の鬼が来たのか?
    先程の赤い炎のようなものは何だ?


    「大丈夫か?」
    「ヒッ!!」


    訳が分からず混乱していると、何処からともなく声がして、驚き悲鳴を上げた。
    声色の方を振り返れば、金色に所々が赤い髪の男が立っていた。
    これも鬼なのか?
    様々な事があり過ぎて、ドッと襲ってくる恐怖に震えが止まらない。
    逃げたいけれども、足が動かない。


    「もう大丈夫だ」


    私の前にしゃがみ込んだ男は、優しい声色でそう言った。
    震えは止まらなかったが、その声色に、もう恐ろしい事はないんだと思った。
    安心した瞬間、目の前が滲み涙がボロボロと零れ落ちた。
    男が差し出してくれた手拭いで涙を拭う。

    男は煉獄槇寿郎と名乗り、先程の崩れたのはやはり人食い鬼で、彼はそれらを狩る鬼狩りだと教えてくれた。


    「他の者は…君の知り合いか?」


    チラリ、と彼は鬼に殺された賊達を見た。
    私はフルフルと首を横に振り、事の経緯を話した。


    「そうか…大変だったな」


    少し険しい顔をして煉獄様は小さくそう呟いた。
    闇夜の中、バサバサと音を立てて彼の肩に一羽の鴉が止まる。
    彼は鴉に何か告げると、鴉は返事をして闇夜に飛んで行った。


    「一先ず私の家に来るといい」


    喋る鴉に驚いていると、そう告げ、煉獄様は私を抱え上げた。
    同じ年頃の息子がいると話してくれた。
    彼は私を抱えているとは思えないくらいに素早く、けれども私が全く揺れる事なく走り出した。




    「只今帰った」
    「お帰りなさいませ…この子がそうですか?」


    あっという間に立派なお屋敷についた。
    玄関の扉を開ければ、凛とした美しい女性が立っていた。
    彼女は彼の御内儀様だろう。


    「ああ。瑠火、頼めるか」
    「分かりました」


    玄関に降ろされた私に彼女が近づく。
    伸ばされた手は細く美しかった。


    「こちらへおいで。汚れを落としましょう」


    手を引かれ、足を踏み入れようと目に映った自分の足は酷く汚れていて
    入れば汚れてしまう、と、浮かせた足をピタリと止めた。
    よく見ると、あちこち血や砂で汚れている。


    「大変な夜でしたね、もう大丈夫ですよ」


    瑠火様は柔らかく笑ってそう言うと、私をひょいと抱えた。
    綺麗な着物が汚れてしまう。
    立派な屋敷が汚れてしまう。


    「おきものが、よごれてしまいます」
    「汚れたら洗えばよいのですよ」


    嫌な顔一つせずに私を抱えて歩く彼女に、せめて、これ以上汚すまいと
    体をこれでもかと小さくした。



    温かい湯で体を綺麗に洗われた。
    色々なところに擦り傷があって、そこに丁寧に傷薬を塗ってもらった。
    殴られた頰には湿布が貼られた。
    息子の物で申し訳ないが、と、肌触りの良い綺麗な着物を身に纏った。

    足は傷だらけだったが、歩けます、と告げた。
    が、問答無用で抱え上げられて部屋まで連れて行かれた。
    部屋には布団が敷かれていて、柔らかな布団の上にそっと降ろされた。


    「何かありましたら遠慮なく言ってください」


    そう言われ、父と母の元に帰って供養してやらねば、と告げる。
    あのまま、骸が転がされたままなんて可哀想だ。
    じわりと視界が滲む。


    「後のことは任せて、今はゆっくりとお休みなさい」


    優しく抱き寄せられて、回された手が優しく背中を撫でた。
    その手はまるで母のようで、父と母に、すぐに弔うことが出来なくて申し訳ないと
    何度も何度も謝った。


    部屋に敷かれた布団の中に入って寝転んでいたが、
    賊の事、父と母の事、鬼の事を思い出して眠れなかった。
    恐怖に体が震え、ボロボロと涙が溢れ、布団を汚してはいけないと起き上がり泣いた。


    「だいじょうぶですか?」


    声が聞こえた先、少し開けられた扉の外に、男の子がいた。
    私と同じくらいの子供だ。
    明るい髪色の少年は私を助けてくれた彼に、よく似ていた。
    この子が話していた彼の息子だろう。


    「きずが、いたむのですか?」


    部屋に入って来た少年は、そう私に声をかけて来た。
    私が泣いていたから、そう思ったのだろう。
    殴られた傷はもちろん痛んでいたが、それ以上に次々と訪れた悪い出来事が恐怖となって
    私に纏わり付いて離れなかった。
    俯いた私の顔を、少年が覗き込む。
    その目は炎のように温かい眼差しだった。
    カタカタと震える私の手に、そっと温かい手が重なった。
    その温かさに、また涙が溢れた。


    「もう鬼はいません」


    安心してください、と優しい声が降ってくる。
    冷たかった私の手に温もりが戻り、手の震えは止まっていた。
    けれど、その温もりを離したくはなくて、思わず少年の手をギュッと握った。


    「いっしょにねましょうか」


    そう言うと少年は私の手を握ったまま、失礼します、と布団の中に潜り込んだ。
    ジッと少年を見つめると、彼はニコリと笑って、もう片方の手で私の頭を撫でた。
    少年の体温で布団の中がじんわりと温かくなる。
    さっきまで冷たかった身体は、ポカポカとして少しずつ眠気がやって来た。
    頭を撫でる優しい手と繋いだ手の温もりに、そっと眠りの中に落ちていった。
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