狼〈ウェアウルフ〉は誰だ(FF5/バツレナ) 真昼の白い光が溢れる長い廊下を、一心に駆けていた。
おそらくどこかの宮殿なのだろうが、レナが知っているどの王城にもこんな廊下はなかった。
——と、思う。
左手には窓が、右手には乳色の石壁が続く。足元には分厚い真紅の絨毯。頭上にはいくつもアーチを描く高い天井が延々と、見える限りの先まで延びている。
どこまでもどこまでも、まるで果てなどないかのように。
「はぁっ、はぁ……」
足音は絨毯に吸われ、細かな埃が光の中で静かに輝く。白昼夢のような美しい光景の中、聞こえる音は自分の荒い息遣い。そして背後から迫ってくる微かな唸り声。その二つ。
どこからどれほど逃げてきたのだったか。
——何も思い出せない。
止まったら捕まる、捕まったら終わりだ。
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