絶望の笑顔「あれ、あの子」
「……先輩?」
「エリスくんにフローリーさん! 今日のペア、君だったんだね!」
寮対抗のマジックモートゥス大会も終わって、学校内のお祭りムードがだんだんと引けて来た頃。先輩――赤寮の、フィービー・マレット先輩と任務の集合場所で鉢合わせたのは、朝の冷たい空気にすっかり慣れてきた一一月の末のことだった。
嬉し気な笑顔でこちらへ駆け寄ってくる先輩に、こちらに対する敵意や悪意なんかは全く感じない。それが、ありがたい反面複雑だった。……俺は、一年前までこの人に対してひどい対応をしていたから。一年の頃、任務で一緒になった彼女に、俺はひどい言葉をいくつも投げた。生家で刷り込まれていた純血主義と、赤寮所属ということに対する嫉妬。生きていくためには欠片も役に立たないそんな感情を、俺は彼女に突き刺していた。あまりにも情けない話だ。そうして、愚かだった俺はそんな対応をしばらくの間続けていたのだ。
9684