七海春歌のにちじょう。【連勤明けの夜編】 流石の連勤は疲れる。
疲労感をあからさまに纏って、肩を低く、首を垂れて、重い荷物をくたくたの腕でギュッと握りしめた。
「も、もう、無理です……」
鞄に手を入れて、無造作に鍵を取り出し、ドアを開け、出鱈目に靴を脱いだ。
荷物は玄関へ肩から落とすように置き、靴下も薄手の上着も洗濯機の中へ突っ込んだ。全てはこの疲労に対する勢いに溢れていた。
「はあー。」
部屋着に着替えることもなく、スカートやシャツのシワを気にする余裕もなく、ソファへ飛び込んだ。ふかふかのソファ。この為に帰ってきたといっても過言ではない。人をダメにするソファ……いや、人をゼロにするソファだ。
「……楽、だなあ……」
春歌は顔だけ横に向けて、一人ニンマリと笑みを浮かべた。頭の上の方に置いてあった、靴下ペンギンのぬいぐるみを引っ張って、細い足と疲労し切った腕の中で抱きしめた。深く深く、ギュッと。
同時に、疲れ切った身と心が、ゆっくりと解れていくような感覚に落ちる。
そんな幸せな時間を感じること、五分。春歌はいよいよ、身を起こし、顔を洗いに向かう。
今日は早めに寝よう、と心に決めた。