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    yuko_gf

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    yuko_gf

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    色々あって生まれ直したフェルベリ双子について。フェルがしゃべってるだけです。後々小説で使うかもしれないメモ

     命であることを疎み、不随意筋を忌みながら、彼は空っぽを選んだ。
     重度の知的障害だと見なされていた。言葉を一切話さず、自閉症状、夜間に覚醒する睡眠障害、過呼吸と無呼吸を交互に繰り返す呼吸障害、小さく冷たい手足。
     だが、そのすべてを彼が選び取っていることが、私には分かっていた。
     幼い箱に収められた六翼の精神。それが計算する。
     己の現状を。なぜ生き、死んでもふたたび生み出されるかを。どうあれば、世界に対して、私に対して、加害的であるかを。

     チェック、エラー。チェック、エラー。
     保守機能を走らせては有効にするまでもないと、ふたたび命のスープの中へかたちを成さずに沈む。
     そういうことを数限りなく繰り返した。

     彼は毎刹那、最も賢い視線で愚かを選んでいた。

     わかるんだ。私と彼はおなじだから。
     ただ違ったのは、私には君や世界がいたこと。彼にはもう、友も望んだ世界もなかったこと。
    だから、必要がなかった。人間をする必要が。人間はおろか、堕天司も、獣も、彼には必要がなかった。そういうかたちを取る甲斐がもはやどこにもないのだから、自ら抱えた繭の中で原初のように蕩けていればいい。
     永久のさらに先、世の終わりまで、まるで懲罰のように肉に成形されすり潰され続けるにせよ、精神までそれに付き合ってやる義理はない。
     手に取るように分かった、彼の意向が。
     だからこそやりきれなかった。置いて行かれた、と感じた。同じ水から生まれた魚なのに、彼はすでに死に絶え腐り干からびている。鱗を虹色に光らせたままで。
     その綺麗で醜い遺骸をずっと見せつけられている。
     彼の濁った赤い虚を見て、考えたんだ。できることなら、彼に近づきたいと。
     でも君を置いて、この美しい世界への希求を捨てて、彼の側にあり続けるなどできない。一方で、彼を諦めるのはこの身を裂くことだ。

     ……彼はそれをやって見せた。私の首を刎ねてすげ替えた。友のために。

     もし、もし私にも同じ選択肢があったなら。
     ……君を、ベリアルに、殺されたとして。
     私が手ずからベリアルの首を刎ね、君のそれと替え縫い合わせることで、君を強く美しく蘇らせられる、そういう選択肢があるのなら、するだろう。私も。
     ただし、彼の首を置いていくなんてとてもできない……朽ちゆくそれを抱きしめて、散々に涙を流し……そのうえでやはり、君と生きる道を選ぶ。
     身体の半分を裂いて、残った片腕で君を抱きしめるだろう。

     私達にとり、互いとはそういうものだ。痛みではなく衝撃の度合いとして……それはもともとひとつの身体を真っ二つに裂くのに等しい。今までに感じたことのない空疎、離別、喪失感……
     どこまでも、絶え間ない『独り』。
     例えるなら、ヒトでいうところのホームシック、を拡大したもの……になるだろうか。
     それらを一度に味わい、私は倒壊した。

     離別に揺らいだ私の背を、彼が最後にそっと押して、結局私は、甘く、息苦しく、彼に駄目にされてしまった。

     彼に呼ばれて、抗えるわけがなかった。

     たとえそれが、苦痛と害意、そして憐憫に塗れた誘いであるにしても。
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