はじめての天ぷら 國孝が人間になってから暫く――御庭番を退くかどうか迷っていた頃のこと。見回りをしてそろそろお昼時となった時、物珍しい顔で街並みを見る紗乃を見て紗乃に怒られないようにと我慢しつつ、それでも我慢しきれず笑みを浮かべた。
「…ここで、昼飯食べるか?」
「えっ!」
驚きと、嬉しさと恥ずかしさを孕んだ表情をしていた紗乃に耐えきれずまた國孝は笑う。
「気になってるんだろう?」
「こ、心が読めるんですか!?」
「紗乃が素直なんだよ、ま。そういうお前俺は好きだけどな」
さらりと言ってのける國孝に顔を赤くさせながら紗乃は國孝を睨む。
「気になっているというか…故郷にはないものだったので」
「天ぷらがか?」
恥ずかしそうに、紗乃は小さく頷く。
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