行方知れず 俺の手を解いてベッドから降りた黒髪の裸の男が、昨夜脱ぎ捨てた服を床から拾い上げ身に纏っていく。カーテンの隙間から差し込む太陽の光が眩しい。俺は気怠げにベッドに横になったまま、帰り支度を始めたソイツを黙って見ていた。
裏返った下着を元に戻し穿く年上の男の姿は妙にシュールで笑える。しわくちゃになったシャツをバサバサと数度振って袖を通し、しがみついて残した背中の爪痕は覆われ留められていくボタン。首筋の情事の痕も襟で綺麗に隠される。ズボンを穿き、白いシャツを雑にインしてベルトを通したテジュンが振り返り、眉根を寄せて俺を見た。何が言いたいのか、わかってる。
「……ネクタイならここだぜ?」
起き上がりもせず青いネクタイを掲げれば、苦虫を噛み潰したような顔。サイドテーブルに見当たらないコイツの探し物は俺が隠した。
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