夏の夜 その日は、今年初の猛暑日だった。
うだるような暑さの中、雨彦とクリスが撮影に取材に番組収録にと、ぎっしり詰まったスケジュールを終えた時には、時刻は21時を回っていた。
日が落ちても朝から続く蒸し暑さは変わらない。
二人は共に暮らすマンション近くのコンビニでタクシーから降り、軽い買い物をする。コンビニからマンションまでのほんの少しの移動だけで、じっとりと汗が滲んできた。
「暑いな……」
「雨彦、大丈夫ですか?」
帰るなりソファに沈み込んだ雨彦に声をかけながら、クリスは慌ててエアコンのスイッチを入れる。
ごろりと仰向けに寝直した雨彦は、そのまま沈黙した。
雨彦とクリスがこのマンションに越してきたのは、一月ほど前のことだ。
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