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    rei_yoruyami

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    勢い余った

    #あんスタプラス
    anstaPlus

    花束 零視点タイトル通り
    花束を読んでからの方がいいかも


    彼女が入院することになったらしい。
    ここ数日、顔色が悪いように見えたのは気のせいではなかったようだ。

    彼女の幼なじみに聞いたが、彼女は『花吐き病』という病らしい。
    片想いを拗らせた場合に発症する病だと説明された。

    彼女が誰かに想いを寄せている.....などと考えたくはなかった。
    それならばもっと最初から彼女に近づいていればよかったと後悔もした。
    今更手遅れなんだろうが......。

    彼女が入院してから、暫くは何もする気力が起きなかった。
    かと言って見舞いに行くことも出来なかった。
    俺が行くよりも幼なじみや彼女の想い人が行く方がいいはずだ。
    .....と言いつつ実際はただ彼女が誰かの為に弱っている姿を見たくないだけだ。

    そんなある日、彼女の幼なじみに尋ねられた。

    「なんであの子の見舞いに行かないの?」

    「.....俺が行くよりもお前が行った方がいいだろ」

    「うそつき」

    怖いだけでしょ、なんて嗤われた。
    あぁそうだよ、怖いだけだ。
    もし彼女の想い人と鉢合わせたら?
    そいつと楽しそうに話している姿を見てしまったら?
    そう思うと見舞いになんて行けなかった。

    「いい加減覚悟決めて当たって砕けなさいよ」

    その言葉が正しいのは確かだった。

    「.....わかったよ」

    放課後にでも見舞いに行くことにするさ。
    何を話すか、などと考えていたから横で相手が『これできっと、』なんて呟いていたことに気がつかなかった。

    放課後、彼女の病室の前。
    通りすがる人間が見たらおかしな状況だろう。
    ドアに手をかけたまま、固まった男が居るのだから。

    ノックをして返事も待たずにドアを開けた。

    「...朔間くん」

    あぁ久しぶりの彼女だ。
    やつれてはいるが、意外と元気そうで安心した。

    「珍しいね、朔間くんが見舞いに来てくれるなんて」

    なんなら初めてじゃない?と笑う彼女。
    まぁな、などと適当に相槌をうちながらベッド横の椅子に腰掛けた。

    何をどう話すべきなのか、それを考えていたせいか彼女がこちらを怪訝そうに伺っている気配がした。
    もう単刀直入に話すしかないか。

    「お前、花吐き病らしいな」

    「.....なんでそれを」

    明らかに動揺していることが目に見えてわかった。
    表情を曇らせたのは俺だ。今だけは彼女の思考を支配できる。

    「お前の幼なじみに聞いたんだよ」

    言った後に彼女を見れば俯いていた。
    これは彼女の癖だ。深く考え事をする時によくこの仕草をしている。
    おそらく、なぜ幼なじみが俺にわざわざ病気の事を話したのか、と考えているのだろう。

    ぐるぐると思考の海に落ちている彼女の腕をとって、キスを落とした。
    伝わらなくてもいい。
    直接言葉に出来ないほど、俺は臆病者だ。

    「...じゃあな」

    彼女に何かを言われる前に部屋を出ようとした、が

    「待って、」

    彼女に引き止められた。

    「いまのは、」

    なんだったのか、と言おうとしたのであろう彼女の口から零れたのは、

    『パンジー』と『ナズナ』、それから

    「『バラ』.....?」

    とても真っ赤なバラだった。
    まるで血のように。

    「お前、これ、」

    『花吐き病』は吐いた花の花言葉が罹患者の心を意味する、なんて聞いたが、まさか、
    だって、『赤いバラ』の花言葉は、

    「...............ごめんね、朔間くん」

    「好きなんだ、あなたの事」

    そう言って、彼女は俯いた。
    どうして彼女が謝る必要があるのだろうか。
    俺だって同じ気持ちなのに。

    彼女の腕を引いて抱きしめて想いを告げた。
    それを聞いて、彼女は暫し固まったあと、自分の頬を抓って、

    「ゆめ、じゃないよね、」

    なんて言うから笑ってしまった。

    お互いに随分と遠回りをしてしまった。
    これから彼女を絶対に幸せにすると誓おう。
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