パティシエのタルタリヤと大学の先生な鍾離の話②くるり。木ベラを翻すとそれに倣うように鮮やかなオレンジ色が形を変える。舌触りが良いように、と丁寧に裏ごししたそれにグラニュー糖と、卵黄、それに生クリームをたっぷりと。全体が柔らかな黄色に変わるまでくるりくるりと混ぜ込み仕上げにバニラを加えてまたひと混ぜ。急がず焦らず、できる限り丁寧に…そうして出来上がったものは、ツヤツヤと滑らかに銀色のボールの中で輝いていた。
「んー、ちょっと甘いかな?まぁいいか。上のクリームが甘さ控えてるし」
味見用のスプーンから舌の上へと滑り降りてきたそれは、こっくりと甘く、それと同時に素材の香りも消えていない。なかなかの出来に自然と上がる口角はそのままに、準備しておいたタルト台を冷蔵庫から取りだした。
5313