何者かになるなら「荻野目桃果さん! 妹さんとの結婚を許してください!」
「出直して来なさーーーい!」
「晶馬くん。晶馬くーん」
はっと目を開くとそこには先ほど自分を一喝した人物とよく似た顔があった。茶色の髪が揺れてはらりと落ちるのを、指ですくいとり耳にかける。呆然とその仕草を眺めていると、彼女はとりあえず晶馬が起きたと判断して呆れたように言った。
「なんで床で寝てるの?」
「え? あっ、しまった」
晶馬が慌てて身体を起こすと、背中から腰にかけてだるい痛みが走る。うう、と呻き声をあげる晶馬を見て、ちょっと大丈夫、と声がかかる。
「うう……今何時?」
「朝の七時よ。昨日から既読にならないから出社前に寄ったの」
「そうなんだ……ありがとう荻野目さん、あっ、やばい仕込み!」
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