ベッドをぶち折る及菅二人分の荒い息が耳についた。この日は普段と打って変わって性急で、すぐにでも食い散らかされそうな勢いに菅原は身震いした。それは底知れぬ不安でもあったし、これからやってくることへの期待でもあった。互いのシャツに手を差し込み捲り上げる。直接肌と肌が触れ合う。どちらの身体もすでにしっとりと汗ばんでいて、同じくらいに熱かった。貪るように唇を合わせて、半ば抱え上げられるようなかたちで菅原はベッドにどさりと転がされる。そしてコンマの差もなく及川も菅原の上にのし掛かった。ぐっとベッドが深く沈み、ギシリと軋む音が響いた。
成人男性が二人で眠るには狭いシングルベッドは、菅原がひとり暮らしを始める際に購入したものだ。あまりお金をかけたくなくて、値札に大きな文字で「特価!」書かれたシンプルな木製のベッドを選んだ。
2690