「ごっそーさん」
そう言い終わるや否や、獠は白木のテーブルの下へ潜り込んだ。テーブルの下の隙間から手を伸ばし、獠はまだ夕飯を食べているあたしの太腿を撫で回す。
「こら」
「ボキちゃん、デザートが欲しいのぉ。とびっきりの、濃くて甘いやつ」
獠は甘える猫のように、あたしの太腿へ頬を擦り寄せてきた。夜になって少し伸びてきた髭がチクチクして、かなりくすぐったい。あたしはお箸をテーブルへ置いて、獠の頭を押しのけた。
ここ数日、獠は依頼を頑張ってくれた。今夜はちょっとぐらい、獠にご褒美を上げてもいいかなーなんて思ってたけど、これじゃあ雰囲気もへったくれもあったもんじゃない。
「おとなしくしてないと、オアズケよ」
「あ? これ以上我慢できるかっての」
獠はわずかに身体をずらして、テーブルの下をすり抜け、あたしの横へ座った。このでかい図体が、狭いテーブルと椅子の隙間をしなやかに通り抜ける様は、何度見ても驚く。
「あと十分だけ待ってやる」
そんなことを言いながら、獠はあたしの太腿へ手を置いた。獠は指だけであたしのミニスカートの裾をたくし上げ、露わになった素肌へ指を滑らせて遊び始めてしまう。あたしはテーブルへ置いていたお箸を手に取りながら、獠をにらみつけてやった。獠は気にする様子もなく、唇だけに薄い笑みを浮かべていた。……もっこりだけは元気に、そそり勃たせて。
「わかったわよ……」
全てを悟ったあたしは、残っていた夕飯を黙々と掻きこんだ。
その気になれば、獠はあたしを無理やり部屋へ連れ込むこともできた。でも、獠はそうしなかった。これでも獠は、暴れそうになっている欲望を、目一杯抑え込んでくれているのよ。そんなことまでわかってしまうようになった自分に、少し嫌悪感も感じるけれど、これも大切な「パートナーのお務め」だから。次の依頼も快く引き受けてもらうため、今夜は獠の好きにさせてあげるわ。
了