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    粟のぽいぴく

    創作とか乗り物擬人化とか落書きします。
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    粟のぽいぴく

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    映画とwebアニメの中間地点くらいのムゲン様と小黒の話。
    ムゲン様今まで食事どうしてたん??という疑問から想像してみた結果

    #羅小黒戦記
    TheLegendofHei

    ※名前の表記は映画の公式サイトの漢字を採用しています。

    「師匠、僕と会うまで1人で旅してたの?」
    修行兼任務の途中、今夜の寝床に選んだ山奥で、小黒は焚き火に手をかざして暖をとりながら、向かいに座る無限に質問を投げかけた。
    小黒の雪のような真っ白の髪が、焚き火に照らされて、夕暮れに浮かぶ雲のような色を見せている。
    「1人のことが多いけど、いつも1人という訳じゃないよ。鳩老や若水が一緒なこともある」
    「ふうん……」
    答えを得てもなお要領を得ないといった顔つきの弟子に、無限は着地点をあれこれ予想した。連携のとり方か?山で迷子になった時の対処法か?それとも……。
    「食事って、どうしてたの?」
    小黒には、どうしてもそれが分からなかったのだ。師匠である無限は、人間最強の執行人と呼ばれる程度には戦闘にも術にも優れているが、こと料理となると、食材を切る以外はてんでダメなのである。焚き火で魚や鳥を炙るだけでここまで不味い料理が出来るものだろうか。
    離島で天虎から貰った肉は、何の肉か分からなかったけれど、世界が輝いて見えるほど美味しかった。店で買う食べ物もすごく美味しい。
    しかし、今のような山奥で食事にありつくには、自分で収穫、捕獲した食べ物を自分で加工するしかない。ずっと1人で旅をしていたならば、自分の料理の腕に気付いていそうなものだが、無限はそのあたりやけに自信を持って(というか、普通のレベルだと思って)小黒に料理を勧めてくるのだ。
    命を粗末にしてはいけないと思いつつ、やはり口に入れておくことに堪えない味の肉は、1口齧っただけで吐き出してしまう。最近はこの人に料理を任せることこそ命を粗末にしているのではないかと思うくらいだ。
    「……」
    火にくべた枝が、ぱちぱちと音を立てる。
    無限は、弟子が言いたいことを察して、じっとりと黙り込んだ後、自身の懐に手を滑り込ませた。
    「なに、それ」
    無限の懐から出てきたのは、無限の手のひら大の巾着袋だった。
    よく見ようと、小黒が無限の隣に近寄ると、巾着袋をそっと手渡された。
    「開けてみて」
    言われるままに巾着袋の口を広げると、乾いた木片のような物体が現れた。鼻を近付けると、僅かに肉のような臭いがする。
    「乾燥肉だよ。動物は毛皮の処理が手間だし、魚のいるような水場がなくて木の実も望めないようならそれを齧って空腹を紛らわせるんだ」
    見本を見せるように、無限が乾燥肉を小さくちぎって口に含む。
    「これがあるだけでもだいぶ違う。魚は生でも食べられるし」
    確かにこの師匠、特に必要がない面倒な毛皮の処理や釣りを進んでする人間には見えない。では何故、
    「どうして僕といると肉や魚を焼いてくれるの?」
    小黒は食べることが好きだが、修行のために新鮮な肉を我慢しろと言われたら、それくらい従う気持ちはある。むしろ師匠に手間をかけさせていると思うと不本意なくらいだ。
    「それは……」
    無限は言い淀んだが、小黒の『何故?』という熱い視線からは逃れられない。
    「師匠は、弟子のためなら手間を惜しまないものなんだよ」
    そう答えると、焚き火に照らされた翡翠色の目が、ぱちくりと瞬きをした。
    「僕のため?」
    「そう。旅の途中でも、小黒に少しでもいいものを食べさせてやりたいから」
    そんなふうに言われると、無理に料理を作らなくてもいいと言いづらくなってしまう。
    「それに、数をこなせば上達するだろうし。段々マシになっていると思わない?」
    ふっ、と笑いながら言うが、実際問題無限の料理の腕は初めて鳥を焼いた時と何も変わらない。自分で食べて戻しているのだから分かりそうなものだが。
    「僕、料理勉強してみようかなぁ」
    小黒がぽつりと言うと、無限はほんの少し残念そうな顔をした。
    「私のことは待てない?」
    そういうことじゃないんだけどっ!内心ツッコミを入れる小黒。
    「僕も師匠にいいもの食べさせてあげたいの!」
    思い出すのは、人間から忘れられた島で、風息たちと焚き火を囲んで宴会をした、もう二度と戻れないあの夜。
    「焚き火の前で美味しいものを食べると、もっと美味しいんだよ。師匠にも教えてあげたいんだ」
    焚き火に目を向けて口をとがらせて言う小黒に、無限は笑みをこぼす。
    「ありがとう。小黒は優しいね」
    小さくて真っ白な頭をかき混ぜるように撫でると、小黒は満更でもなさそうな顔で無限を振り向いた。
    「師匠ほどじゃないけどね!」

    この旅の後、妖精館では四苦八苦しながら料理自慢の妖精たちから料理を教わる小黒の姿が目撃されたという。
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