xoxo「七種くん、ここでは、ちょっと…」
「どうせ誰も見てませんよ」
狭いエレベーターの中で、私の手を握って身体を寄せる茨くん。
どうせ誰も、というよりはたくさんの人が乗っていて、私は気が気じゃない。
真夏でもないのに変に汗はかくし、視線も定まらない。
茨くんの背中に隠された私の右手は、遊ぶように握られ擦られとくすぐったい。
7階でニューディの社員が降りる。
12階でリズリンの社員が降りる。
ここでやっと人が少ないという程度まで減って、ふっと息を吐くと、次に到着した18階で茨くんは降りる。
「あんずさんは20階ですよね?」
「…え?え、えぇ、はい」
私たちの他にはあと3人。
ガラス向こうの青空を背に、どうか振り向かないでと祈るばかりで、繋がれていない反対側の手をぎゅっと握る。
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